第22章 赤い船
「ここまで来たんだ観念しな」
「ええっと……えぇっと…………」
イリスの乱入で幾分やわらいだシャンクスだが、グレイスは何を何処から話せばいいのかテンパってしまってわからない
(話す気はあるのよ~だから……だから~)
うんうん唸るグレイスは、ふと手に持つ煙草が目にとまる
「これ!煙草が苦手だって聞いたのよ」
「イリスがか?」
「そう、だから今まで彼女の前では吸わなかったの」
「で、一体誰から聞いたんだ?」
「イリスちゃんのお父さんよ」
「父親っていうと……革命軍のドラゴンか?」
「あら、知ってたの?」
イリスは宴の時も、修行中については言葉を濁して革命軍の“か”の字もドラゴンの”ド“の字も出さなかったのに……
やはり四皇の情報力は侮れない
グレイスが関心していると
「じゃあ、お前はイリスに付けられた護衛ってことか?」
「うーん?それが一番近いかしらね~」
グレイスがイリスの旅に同行する事になったのはイリスの父ドラゴンからの依頼によるものだったのだ
ドラゴンは娘の一人旅を非常に心配していて、バルティゴでの修行中から護衛を連れていけ、としつこく言っていた
だがイリスは
「エース以外の男と旅したくない」
「最初はエースがいいの」
「エースに会った時、浮気を疑われたらお父さんを怨むわ」
と、かたくなに認めなかった
じゃあ女ならいいのか?と思った事もあったが、女の二人連れでは海賊への歯止めにならない
屈強な男が側にいてこそ抑止力になるのだから
男の護衛を!と、思っているドラゴンにも心配はあった
可愛い娘と男の二人旅
もし間違いがおこったら…………
父として護衛をつけたいが本人には断られ
屈強な男の方が旅は安全だがイリスが心配
悶々としたジレンマで悩みつづけるドラゴンに革命軍幹部らは思わず笑みがこぼれる
いろいろな妥協の末
男でありながら心は乙女である者
つまり“オカマが”護衛にうってつけである、という結論にいたる
しかし、顔見知りではイリスに勘づかれるので外していったらバルティゴ内に候補者はいなくなった