第22章 赤い船
「ち、違うんです!何にも無かったの!その……ちょっと………いろいろ誤解が………………」
ゴニョゴニョ弁明を続けるイリスに隠れている背中の主から
「まあ、何にも無かった事は疑わないが、男だけの船に何日も乗り続けるのはよくないな」
周りも
「そうそう」
「潜水艦ってのもよくない、逃げられないだろ?」
「ルーキーの船なんだろ?飢えたガキどもの船なんて危ねぇよ」
皆、親身になって言ってくれているのは分かる
しかし、彼はらロー達の事を知らない
あまりの言われ様につい擁護してしまう
「でも、いい人達だったから………白熊も可愛かったし…………」
後半のボソッとつぶやいた余計な一言によって更に怒られたのは言うまでもない
だが怒りながらも彼らは
「あの小さなイリスがなぁ~」
「もう大人なんだなぁ~」
と、しみじみと感慨に浸っていた
特に、海に出た目的である恋人エースの話になると根掘り葉掘り質問責めにあい
イリスはいいように冷やかされ、真っ赤になっていった
そして、シャンクスに会いに来たエースの話を聞かせると
「エースに仲間がいるの?白ひげ海賊団以外に?えっ?入る前?ちょっ……もっと詳しく!!」
お互い別れてから手配書の写真でしか状況を知らない
エースの話を渇望しているのだ
「エースはいいやつだったよな~」
「そうそう、あれは大物になる奴だ」
「船員にも慕われてたぜ?」
「イリスは男を見る目あるよ」
エースの話題を幸せな笑顔を浮かべながら聞き入るイリスに全員が和んだ
夜更けまで続いた宴は終わりをむかえ、各々寝床へと帰っていく
イリスには勿論、船長室
ドアの外にはしっかり見張りまでつけられている
部屋を明け渡した船長はと言うと…………
「イリスの側にいなくていいのか?」
船尾で海を見ながら煙草を吹かすグレイスと話をしていた
「大事な娘(こ)なんだろ?」
「それは……お互い様じゃないかしら?」
ローの船にいた時よりは安心しているわ、との船員達への評価
この船にはシャンクスの認めた者しか乗っていないのだから、その評価はシャンクス自身の評価とも言える
「そりゃ、有難いな…………」