第22章 赤い船
「あの状況じゃ仕方ないさ……でもな……」
シャンクスはほとんど抵抗もせず、身体を震わせ、連れ回されたイリスが心配だった
本当に不審者だったらどうするんだ
まだ独りで海に出るのは危ない
こんな治安の悪い島を女一人で歩くな
と、かなりきつめに言われた
普通なら萎縮してしまう場面だが、イリスはか弱い演技で見事シャンクスをあざむけていたのだと分かり嬉しくなった
笑うイリスに怪訝顔のシャンクス
誤解を溶くため、演技であった事と自分も目立ちたくなかったからからだと、とつげる
疑いの目を向けられたが、倒せる自信があったし、実際にシャンクスもそれなりに喰らっているので信じないわけにはいかなかった
「でも危険な方法だ、あまり過信するなよ?」
男にもいろんなタイプがいて全てにあてはまる訳ではない
大多数には有効でも相手が少数派だったらどうする
とのこと
確かにあの時は焦った
身を震わせても腕の力は緩まるどころか強まったのだから…………その時の事を聞くと、
「あの時、屋根の上だったろ?高いところが怖いのかと思って揺れないように……ってな」
(ああ本当だ…………少数派がここに)
男と言っても一筋縄ではいかない様だ、とイリスは身をもって学んだ
「ところでイリス、今から俺の船に来いよ!みんな会いたがってる!」
島の裏側に隠してあるレッドフォース号へ招待された
あれからクルーも増えて賑やかになっている
古参連中は懐かしく、新参らは頭(かしら)が捜す女の子に興味津々、とのことだ
イリスも懐かしいみんなに会いたかったが、今は一人ではない、しかも買い出し中だ
「ごめんなさいシャンクス、連れがいるの。船に帰らなきゃ…………」
イリスとしてはシャンクスに会えただけでも十分満足していたし、時間もない
これ以上グレイスを待たせるわけにはいかなかった
『連れがいる』
フラれる時の常套句
これがイリスとの会話で出るとは、なんとも新鮮だ
シャンクスは“鷹の目”が“よくわからん奴”と評したイリスの連れを思い出し
「そいつも一緒に来いよ!今夜は宴だしな!多い方が盛り上がるぞ?」
迷い無く誘った