第22章 赤い船
「シャ…………シャンクス?」
呟くようにか細い声だったが相手にはしっかり伝わったようで
「おう!元気だったか?」
ニカッと笑顔で答える
昔と変わらない笑顔
村の港で彼を出向かえた時を思い出す
今は若干涙目ではあるが……シャンクスだ
「えっ?ええぇぇ~!!」
会いたいとは思っていたが、こんなにもすぐに会えるなんて…………
人目を気にして大人しくしていたイリスだが、まさかの再会にグレイスとの約束が吹っ飛ぶ
島に来て一番の大声で驚きを表すと男は満足そうに頷いていた
イリスはフードをとり、開けた視界でもう一度見ると、そこには片腕を広げ自分の名を呼ぶ彼がいた
「イリス」
懐かしい記憶のままの慈愛に満ちたその声にイリスも答える
「シャン……クス!シャンクス~!!」
駆け出す足
滲む視界
笑う口元
さまざまな感情が溢れだす
(きっと自分はひどい顔をしている)
そう思いながらも、シャンクスの胸に飛び込むのを止められなかった
「うぐっ……でかくなったな~イリス!」
イリスの肘鉄がヒットした鳩尾に頭が直撃、たまらず呻くが、そんなことはお構いなしにイリスは力いっぱい抱きついた
「それにキレイになった」
自分の胸板に埋められている顔を持ち上げ、おでこにキスをするシャンクス
「約束どおり、あれからお前以外のここにはキスしてないぞ」
頭を撫でながら見つめてくるシャンクス
目が合い、自分の顔が真っ赤になるのを感じる
そして10年以上も昔にした子供との約束を覚えていてくれた事にまた涙が出た
「シャンクスのバカ~!なんでこんなところにいるのよ~」
泣きながら話すイリス
会えて嬉しいが聞きたい事もたくさんある
なんで四皇なのに新世界から出て来てるのか
なんでこの島にいるのか
なんで街中で自分を見つけられたのか
なんで誘拐まがいにさらってきたのか
全ての意味が詰まったその問いかけにシャンクスの答えは実にシンプルだった
「そりゃイリスに会うために決まってるだろ?」