第22章 赤い船
「イリスちゃんは見た目が可愛らしいから男は油断すると思うの、そこを利用するのよ」
「男が女を襲う時なんて後から××××して×××××させたいからなんだから、なるべく無傷で捕らえようとしてくるはずよ」
「自分が女である事を理解し、最大限に活用しなさいね!」
「ちょっと涙目になって震えてりゃ、男なんてイチコロよ~?その隙に急所に一発!これで決まり!」
「男の×××××は××××で、××××して×××××すると…………」
イリスが足元にもおよばない様な経験と実力がある大人の女性達は、恋人を捜しに独り海に出る田舎娘を心配してくれていた
世の中の酸いも甘いも噛み分けて男達を片手で転がしている様な彼女らの、的確かつ赤裸々なアドバイス
初めて聞いた時はあまりの内容にぶっ倒れてしまい、更に心配を強くさせてしまった
そんな彼女ら直伝の演技が通じないなんて……
ますます警戒を強めるイリス
同時に焦りを感じる
しかしそれでは相手の思うつぼ
悟られないよう心を落ち着かせ、か弱い自分を演じ続けていた
イリスを小脇に抱え、移動を続けていた男の動きが止まった
イリスの足が地面に着き、男の腕が身体から離れる
「ひさ……」
イリスは渾身の力で男の足を踏みつけた
何か喋ろうとしていた様だが関係ない
「ぃッてぇ~!!」
すかさず背後に立つ男の鳩尾に肘鉄を喰らわし距離をとる
「ヴごはッ!!」
苦しそうによろめく男
このまま逃げてもよかったが、騒ぎを大きくされるのも困る
イリスは相手の意識を刈り取ろうと“覇気”を出して威圧してみるが、男は苦しそうに咳き込むばかりで倒れる気配が無い
こうなったら物理的に相手を昏倒させようと頭を狙い蹴りを繰り出す
いや、出そうとしたその時
「ちょッ……まてまてイリス~!俺だ俺っ!」
蹴り倒そうとしていた相手が静止をかける
本来なら止まるべきではない
革命軍のお姉様方にも男には容赦するなと言われていた
でも、そこで止まってしまうのがイリス
自分の名を呼ばれたこともあり、つい立ち止まってしまう
薄暗い中、警戒を怠らず相手を見ると……
赤い髪、無精髭、見えない片腕
それは…………