第22章 赤い船
てっきり自分が留守番させられると思っていイリスは、その大人な対応に関心した
優しく世話焼きで、女子力が高く
頼りになる
そう、グレイスは姉のような存在を通り越して、まるで理想のお母さん
母親と言うものに縁遠かったイリスにとって手本とする人物(外見の差異には目を瞑っておこう)
ガバッとグレイスに抱きつき、親愛と感謝を伝える
「ありがとうグレイス!さすがいい女!大好きよ!」
「……ンもう、知ってるわよ~いいから気をつけるのよ!!」
若干、頬が赤いグレイスを船に残し、イリスは賑わう街に歩を進めたのだった
そんなやり取りの後に出掛けたイリス
もちろん目立った行動はしない
必要な物を買い、最低限の会話しかせず、淡々と島での目的を果たしていた
気になる小物をグッと我慢
美味しそうな屋台を見ないふり
面白そうなイベントも素通り
自分を信頼して送り出してくれたグレイスの為にも問題を起こさず、粛々と買い物を済ますイリス
そんなイリスがシャンクスの噂に懐かしさと親しみを感じ気が緩むのも無理はなかった
道の端で立ち止まり、ヘニャっと顔が緩む
言いたい事もたくさんあるけど、やっぱり会いたい気持ちが一番強い
シャンクスとクルー達の懐かしい顔を思い出し笑みが止まらない
荷物を抱え、グレイスにも相談しなくちゃ……と意識を来た道に戻した時
「………ッ!?」
背後からスッと音も無く伸びてきた手によってイリスは薄暗い路地裏へと引き込まれた
一瞬の出来事に声を出す暇もなかった
いや、あったとしても賑わう街中の道の端
連れも無く、うつむきがちのうえ、フードで顔も見えない女がいなくなったとしても誰も気になど留めなかっただろう