第22章 赤い船
それは本当に偶然
立ち寄った島で買い物途中にふと聞こえた
「“赤髪”が新世界から出てきたらしいぞ?」
「この島の漁師が船を見たらしい」
聞こえてきたその話で今、この島は異様な熱気に包まれていた
四皇を討ち取り名を上げようとする海賊
それを捕らえようと集まる海兵
島民は恐れ怯える者や、たくましく商売に精を出す者など様々だった
イリスは噂話を聞いた瞬間からシャンクスに会いたかった
遠い昔に故郷で出会ったやさしい海賊
弟ルフィの恩人
イリスのおでこにキスをして去っていった人
この広い海でもう一度会えるなんて思っていなかったが、こんなにも近くにいるのなら是非とも会いたい
そして一言文句を言いたい
あの日、驚きすぎてキスされた後の記憶が無く、いつの間にかシャンクス達は出港してしまっていた
もっとちゃんと見送りたかったのと、その後エースに会うのが気まずくなった事に対しての文句を今ここで………………
商店街の人通りの中
フードを深く被り歩くイリスはそんな事を考えながら昔を思い出して笑みが浮かべていた
四皇シャンクスの噂に沸く島に上陸する前のこと
「いい?イリスちゃん!貴女は毎回毎回、事あるごとに…………」
イリスはグレイスから長々と島での行動に注意するように言いきかされていた
そんなに目立つ行動なんてしたこと無いのに……、と反論したらカッと眼を見開き、倍ほど言い返される
確かに、じっくり思い返してみればいろいろやらかしてる…………かな?
手配書を出された経緯や、世界一の剣豪に出会ったり、病気で死にかけたり等々
イリスがこれまでのしみじみ思い返していると
「ちょっと聞いてるの?」
グレイスがキッとこちらを睨んだ
まだ話は続いていたようだ
上の空でグレイスの話を聞いていなかったイリスは言葉に詰まり、目が泳ぐ
「あんた全然懲りて無いわね…………」
そんなイリスに呆れたため息をつき、せめて顔を隠して行きなさいよ、とフードつきマントを手渡してきた