第21章 砂の国
「麦わらぁぁぁ!!!」
目の前にあった邪魔な頭をどかし、やっと見つけた敵を見据える
間違いない
麦わら帽子に赤い服
知的とは言い難いとぼけた顔は、メシを食っていようと処刑台に張り付けられていようと変わらない
気分が高揚し、口角が自然と引き上がるのを感じる
「やっぱり来たか、この国に…………」
グランドラインには様々な島があるが、最初のルートを知る事が出来れば立ち寄る島は特定しやすい
何週間、何ヵ月とずっと海上のみを移動するのは不可能に近く、必ず物資の補給が必要なのだが、それが出来る島は限られている
ログポース通りに進めば島はあるが、何もない島、無人島、危険な島も多くある
そのなかでアラバスタは砂漠が国土の大半をしめてはいるが、治安、文化水準、島の大きさなどからグランドラインをゆく船が必ず通る島として栄えている
目撃情報を頼りに後を追ってもつかまる確率は低い
ならば現れやすい場所で待ち伏せるまでだと、この国に網を張っていたら、まんまと現れたということだ
話しかけても返事は無い
それどころか食べるのを止めない
動揺する素振りもなく手を動かし、食べ物を口に運んでいる
ずっと食べている
互いに無言
食べ物を咀嚼する音だけが嫌に響く
追いかけてきた海賊が目の前にいるのに、自分はまったく眼中にないかのような態度に上がっていた口角もひきつる
「食うのをやめろ!!」
苛立ち、声を荒げるスモーカー
しかしルフィは食べるのを止めない
黙々と皿の料理を消していく
ルフィも目の前にいる男を無視している訳ではない、自分を見ながら“麦わら”と叫んだ男を見てはいる
見てはいるが誰かは認識出来ていない
元々ルフィの記憶力はあまり良くない
さらに今は身体が食い物を求めているので、頭にはエネルギーがほぼ回っていない状態
思考回路が鈍っているのである
ルフィは食いながらも頭を使い、記憶の中から以前であった海兵を思い出した
「!」
雨のローグタウン
そこで手も足も出なかったケムリの男が今、
目の前にいた