第21章 砂の国
「”白ひげ海賊団”二番隊隊長が、この国に何の用だ“ポートガス・D・エース”」
店に現れた男の言葉に店内がざわめく
白ひげ ”エドワード・ニューゲート“
四皇の一角で、かつて海賊王ゴールド・ロジャーと互角に戦ったと言われる世界最強の男
そんな男の部下で自身も賞金首という有名人が、まさか食事中にいきなり眠りこけるような、とぼけた男だと誰も思わなかったのだろう
エースはゆっくりと声の主に向き直る
この国に来た理由はティーチを探してだが、それをわざわざ海軍に教えてやる義理はない
これは白ひげ海賊団内での不祥事
海軍に知られては船長白ひげの威厳に関わる
「弟を、探してんだ」
嘘ではない
エースが会いたいのはティーチ、ルフィ
そしてイリスだ
けじめの意味でのティーチ
兄としてのルフィ
愛する人としてのイリス
個人的に一番会いたいのはイリスだが、こちらもわざわざ教える必要はないので無難なルフィを選んだ
「で、俺はどうすりゃいい」
気さくに話しかけるエース
海兵を相手にしているとは思えない余裕の表情
一方、スモーカーは険しい表情で海兵としての職務を口にする
「大人しく捕まれ」
「却下、そりゃごめんだ」
相手の言葉尻に返答を被せ拒否をする
挑発的な対応だが相手も答えが分かっていたのか、興味無さげに肯定する
そして、違う海賊を追っているから本当にエースの首には興味がないと言ってきた
「じゃあ、見逃してくれ」
「そうもいかねぇ、おれが海兵でお前が海賊であるかぎりな…………」
スモーカーは拳を白い煙へと形を変え構える
そして今にも自分に向けられるその攻撃を見ても悠然とした態度を崩さないエースに苛立ちを覚えた
口の端を上げ笑うエース
こうなるとわかった上で言ったのだ、律儀な奴だと感心するが……
「つまんねぇ理由だ……楽しくいこうぜ」
こいつはただ、義務で動いている
本当に捕まえたい奴がいるくせに
海軍だから、海兵だから、ただそれだけで……
つくづく海軍ってのは堅苦しい所だ
そんな理由で捕まる訳にはいかない
エースが顔を上げスモーカーを見据えた時、はるか遠方からこの店を目指してゴム人間が飛び込んできた