第20章 無理難題からの絶対絶命
大騒ぎだった甲板を飛び立ってしばらく
久しぶりの長距離移動に緊張していたイリスだが、穏やかな天候にホッとし少しの余裕が生まれた
なので、グレイスをチラ見する
昨晩からのローに対する怒りを発散出来ないままに出発してしまい、グレイス自身も納得してないのだろう
顔や態度があからさまに不機嫌を物語っているし、まともな会話も続かない
イリスは独り言の様に今までの思い出話や、これからの予定を話し続けていると
「イリスちゃん!貴女に危機感って物は存在しているのかしら?」
優しげだが威圧感のある静かな口調でお説教をくらった
男には常に警戒心をもって接しろ、とか
人を信じすぎ、とか
強いのに抜けてる、とか
もっとしたたかに生きろ、とか
街では自分のそばから離れるな、とか
知らない人に着いていかない、とか…………
延々と注意事項を並べ立てられ、最後の方はまるで幼児に言って聞かせるような内容になった
イリスはうんうん、と頷きグレイスの話しをしっかり聞いた
その態度に満足したのかグレイスは
「……と、言う事だから!わかった?あと、大人の女は、”なんでもする“なんて言っちゃだめだからね!!」
これが一番大事!、と
念を押すように言いお説教は終わった
それからは今まで通り、二人の楽しい空旅になると思いきや、グレイスのローに対する怒りはまだおさまっていなかった
ローの事を悪し様に罵る様子に
「命の恩人なんだし、そんなに悪い事ばっかりじゃなかったわよ?」
と、ベポとの楽しい記憶を思い出しながら反論すると
「あ~ら~?あの野郎に未練でもあるのかしら?」
イリスちゃん黒髪が好きだもんね~っと邪推された
しかも
「エース君に言っちゃおうかしら~?、イリスちゃんがローとあ~んな事や、こ~んな事をしてたって~」
ヒッと息を飲むイリス
イリスとてローとあんな事があったなんて出来れば隠したい、例えやましい事はないにしても………
「お願い!!グレイス、エースには黙ってて!”なんでも“するから!」
「あんたそれ、やめろって言ったでしょ!」
その日、海域を震わせる大声が空から響いたという