第20章 無理難題からの絶対絶命
目の前にいる昨夜の据え膳様は
頬を染め、伏せ目がちに自分の名前を呼ぶ
”後悔“の文字が頭をよぎるが一度決めた事
このまま出発を見送る事に変わりはない
無いが…………
「2つめの条件だ」
これくらいは許されるだろう
うつ向きがちな顔を持ち上げ
俺の名を呼んだその唇に
自分の唇を押しあてる
後ろの仲間達からはどよめき
押しあてられた本人は呆然
その後ろからは勢いよく、鬼の形相をしていたあの野郎が割り込んで来た
「イヤァ~!!あんたイリスちゃんに何、仕出かしてくれてんのよ!!!」
イリスを抱きしめ
唇を甲斐甲斐しく拭いながら睨んでくる
「これで”あの事“と治療費の足りない分は忘れてやるよ」
満足気なローからは余裕の承諾
されるがままだったイリスは顔を真っ赤に染めグレイスに抱きついていた
キスひとつで治療費まで浮いたと喜ぶべきか
そんなに安い女じゃないと怒るべきだったのか
イリスは飛びかかる勢いのグレイスを押さえながらそんな事を考えていた
目の前のグレイスの怒りっぷりにキスされた本人は逆に冷静になっていた
確かにビックリした
すごい恥ずかしかった
そして怒ってもいる
でも今、それどころじゃない
甲板の上は乱闘寸前
船長さん……じゃなくて、
ローとグレイスはまさに一触即発
間に大勢のクルーが入り距離をとり睨み会う
私が必死にグレイスをなだめて
“大丈夫だから“とか”気にしてないから”って
なんでされた本人がそんな事言わなくちゃいけないのか、って事も言っちゃってるけどグレイスが落ち着いてくれるなら何だっていいわ
私がそこまでして
事態を収めようとしてるのに
それなのに!
“またバラされてぇのか” とか
“野郎の分まで忘れてやるつもりはない”
とか
ローはグレイスに挑発的な態度を繰り返す
もういい加減にして欲しい………