第20章 無理難題からの絶対絶命
(余計なことを……)
彼に対する舌打ちが部屋に響きイリスはまたビクリッと肩を揺らす
「出られるさ、ただ俺と一晩過ごして恋人なんかどうでもいい、って事になれば、いつまでだって居ていいんだぜ?」
勿論、約束は守るがイリス自身が留まりたいと言うのを止めはしない
そして、そうさせる自信がローにはある
グイッと顔が近づき、唇同士が触れあいそうなほどに距離を詰めてきた
「なりません!私がエース以外の人を好きになるなんて絶対ありません!」
ベットに押しつけられたイリスに逃げ場は無く、首をひねって距離をとる
しかしローは顎に手をかけ、こちらに向けさせる
手をかけた所から微かな倦怠感を感じた
「お前が“それ”着けたままだと俺も楽しめないんだが……」
海楼石の影響を少し受けたローが唸る
ペンギン呼んで外して貰うか?なんて考えていたら………
「じゃあ、このまま諦めて下さい、おっ……お医者さんなのに、こんな事するなんて信じられない!!恥ずかしく無いのっ!?」
僅かな希望にすがるように震える声で虚勢をはるが、ローには全く届かない
「医者だが海賊だ、欲しいもんは奪う」
「きゃッ…………」
言うより早くイリスの上着を引きちぎる
手錠をした状態の為この方が速いのだ
“海楼石”は間接的であるため、全く動けない訳では無い、やり様はいくらでもある
「いやっ……やめてっ!!」
恐怖にひきつるイリスの顔
契れたボタンが床に落ちる音がした
露になった胸元に視線を奪われるロー
左胸にある炎の刺青に触れるがイリスの反応は無い
(…………?)
怪訝に思い目線を顔へやると、イリスは目を閉じまま動かずにいる
(ッ……!!!)
手首と顔に手を置き、脈と呼吸を確認する
指先にトクトクッ……と、静かな振動
どうやら恐怖のあまり気を失なってしまったようだ