第20章 無理難題からの絶対絶命
バタンッ
静かに閉まる扉を見つめたままのイリス
頭の中はぐるぐると様々な考えが駆けめぐる
(えっ………何?どういう事?)
船長さんは抱かれれば、明日の朝には船を出ていけるって言ってた
ペンギンさんは出て行って欲しく無いから抱かれてくれと言う
(いや、その前にエース以外の男の人に体を許すなんてあり得ない!私はエースだけのものよ!)
いきなりの出来事に焦り、パニックに陥っていたイリスだが、一人部屋に置き去りにされ、段々と冷静に考えられる様になってくると…………
(あっ!でも、きっと船長さんなら話し合えば分かってくれるよね?だってお医者さんなんだもの……)
今の状況がかなり危機的であることは変わらないのに、まだ“医者”と言う肩書きに全幅の信頼を寄せているイリス
警戒心が無いのか、切る抜ける自信があるのか、ただ深く考えていないだけなのか…………
見た目よりも、いささか中身の幼いイリスは別の心配をし出した
(それよりも、グレイス大丈夫かなぁ~)
船長さんと睨み合ってた所までは微かに覚えているが直ぐに連れ出されたので、どうなったかが気になる
(グレイスが助けに来てくれる、ってのが一番いいんだけどなぁ~)
動かない体をよじりながらベットの上から移動しようと試みるが、ただシーツにシワを作っただけに終わった
どれくらい待っただろうか………
部屋の扉が開く音がした
「グレイス!?」
イリスは顔を入り口に向けることも出来ず、声をはって呼び掛ける
「あの野郎じゃ無くて残念だったなぁ………」
冷たい声音の船長さんがゆっくりと部屋に入ってきた