第20章 無理難題からの絶対絶命
「へっ?」
蒼い瞳をぱちくりさせてイリスが固まる
男心の分からないイリスだが
エースと言う恋人がいる身の彼女は、その意味がわからないほど子供では無い
「じゃあ早速だが部屋に行くか」
呆気にとられたままのイリスの腕を掴み、ズンズンと歩き出したローにグレイスが待ったをかける
「“船長さん” イリスちゃんを離してもらうわよ」
グレイスはわざと、イリスが使う呼び名でローを呼び止める
眉を歪ませ、イラだつロー
薄く殺気を纏ったグレイスに自らも刀を構える
「せっ……船長、ここ食堂ッスよ?」
逃げろ、離れろ、と騒ぐ仲間を無視してローはイリスをペンギンに渡す
「手錠、部屋」
「へ~い」
短く伝えて再びグレイス(邪魔者)に向き直る
ローからイリスを受け取ったペンギンは、慣れた手つきで海楼石の手錠を取りだしイリスに取り付ける
「離して下さいペンギンさん!あの……………?あれっ?体が………」
能力者の弱点である海の力を持つ石
“海楼石”
悪魔の実を食べてからまだ海で溺れた事の無いイリスは初めて自分の体の自由がきかない状態に焦りを感じた
まともに立つ事も出来ず、ペンギンに抱えられ、そのまま食堂を後にする
廊下を歩くペンギンに離して、助けて、と懇願するも
「船長命令ッスから」
「大丈夫ッスよ~船長、ああ見えて優しいッスから」
「心配しないで下さい」
(違う………そうじゃなくて………)
あっと言う間に船長室に着き、ベットの上に転がされる
「きゃっ!ペンギンさんお願い、助けて!」
背を向け出て行こうとするペンギンに必死のお願いをするイリスしかし
「…………俺もイリスさんに出ていって欲しく無いんッス」
「えっ?」
さっき別れを告げた時には『元気でな』って言ってくれたのに
「だから…………」
「だ…だから………?」
「大人しく船長に抱かれちゃって下さい!」
お願いします、と、ペンギンさんは頭を下げ出て行った