第20章 無理難題からの絶対絶命
「無理です」
「なんだ?いきなり自分の言葉を覆すのか?」
またあのニヤニヤ笑いでこっちを見てくる
周りにいるペンギンさん達も、私への同情と船長さんに逆らえないあきらめの表情でこっちを見ている
「うう~う~ん…………じゃあ聞きますけどその薬、いつ出来上がるんですか」
船長さんの為に何かしたい気持ちはあるが、時間がかかるのはちょっと…………
何とか出来ないかと色々聞いてみれば
「短くて半年、長くて数年ってとこか」
「やっぱり無理です!!」
短くても半年だなんて…………ムリッ!
そんなに待てない
すぐにでもエースを捜しに行きたいのに
「どうにかなりませんか?船長さん……」
「自分から礼をすると話を振っておいて無理なら断る、か」
「うぐっ…………」
冷静に話をまとめ、あざける様に笑われた
でも仕方がない、その通りなのだから
うつ向き、困った顔でいるイリスを見据えるローは今この時、彼女が自分の事しか考えていない事に非常に満足していた
(もっと俺の事だけを見ろ……)
ローは無理にでもイリスを船に留まらせたかった
そして恋人の事を忘れさせ、自分のものに…………
「ゴメンなさい、やっぱりムリです…………何か他の内容にしてもらえませんか?お願いします!!」
深々と頭を下げるイリス
どうしても船に残れないと言うイリスに次第にイラだつロー
ちょうどそこへ出ていく準備を終えたグレイスがやって来た
「あら~?イリスちゃんどうしたの~?」
食堂内の異様な雰囲気と、ローに向かって頭を下げるイリス
状況を掴めず、近くにいたシャチにコソッと聞いた
(イリスちゃんたら……バカなのかしら?)