第19章 ハートの海賊団にて・その2
「そういえばさぁ?グレイス、あの時船長さんに何て言ったの?……………って、うわ!」
目の前で奇怪なポーズをしているグレイスに驚き、のけ反ってしまった
「んもぅ~やっと気づいてくれたわね~」
心ここにあらずな状態だったイリスの気を引こうと、あれこれしていたグレイス
いつの間にかとんでもない格好で頑張っていたらしく………
イリスに不満をもらした
ゴメンッ!と謝るイリスの前にグレイスは改めて座り直しやっとまともな会話が始まる
「それで、“あの時”っていつのことなの?」
かくかくしかじか………
イリスの説明に、ははぁ~んと頷く
(あれって確かイリスちゃんの部屋に忍んで行きたい船長さんが、私がいると邪魔だってことじゃなかったかしら……………?)
イリスに本当の事を伝えて良いものか悩む
イリスは基本この船の人は皆いい人だと思っているようだし、真実を伝えてビビらせても可愛そうだ
それに、黙っているのが条件で無理矢理一緒の部屋にしたようなものだから尚更だ
イリスはまだ無自覚だが、グレイスはローがかなり本気でイリスを狙っていると踏んでいる
間違いが起こる前にさっさとこの船から出よう、と今まさに話し合っていた所にこの脱線だ
困ったグレイスは
「んん~?何だったかしら?」
誤魔化すことにした
「ええぇ!忘れちゃったの?」
残念~っ、と落ち込むイリスに優しく語りかける
(素直に信じちゃって可愛いわね)
「きっと大した理由じゃないわよ…………それよりも、最初にしてた話覚えてる?」
「うん……覚えてる、どうしよっか………」
二人が話し合っていたのはこの船から出ていく準備について
グレイスの体調も完全に戻ったし、いつまでもお世話になってはいられない
それに、思わぬ病気で足止めさせられたので、早くエースを捜す旅を再開したかった
先日、物資補給の為に立ち寄ったクリケッ島では自分達の旅支度の他に、皆へのお礼の為にお金を稼いでいた
もちろん、イリスの羽根で作った小物を売ってだった