第19章 ハートの海賊団にて・その2
プーッと膨れた顔で、グレイスが皆を睨む
『それに、私の方が身の危険を感じちゃうわよ!飢えた狼達の中に子羊を放り込むもんよ?恐いわ~』
確かにグレイスはキレイな顔をしている
スカーレッ島では女の子達に取り囲まれていたし、ちゃんとした格好をしていたら普通にカッコいいのだ
それに、少数だが女の子達の他に男からも熱い視線を受けていた
グレイスの言葉にげんなりとした表情でこっちを見ているシャチさん達
彼らの中にはグレイスと同じ趣味の方達はいないみたいだ
『イリスさんならともかく、グレイスさんじゃあなぁ~?』
『そうそう!イリスさんなら大歓迎!』
『イリスさんと寝泊まり…………』
顔を赤らめるクルー達
『あら!大丈夫、イリスちゃんは私が守るわよ!だから安心して!』
あらぬ方向に話が進んで行っている………このままでは皆で1つの部屋に寝泊まりすることに…………
『おいッ!』
大きな音と共に船長さんが立ち上がった
一瞬で背筋を伸ばし、直立不動となるクルー達
『俺の決定に文句がある奴はどいつだ?』
周囲を一瞥し、睨みをきかせる
面と向かって船長に意見できる者などいる訳がない
皆、大人しくうつ向いている
このままグレイスがクルー達の部屋にお邪魔することに決まりかけたその時…………
『あの~私の今いる部屋を一緒に使うのじゃだめなんですか?』
おずおずと手を上げてイリスが船長に意見した
『あぁ?何言ってやがるこいつも男だろうが』
気づかいを無にする発言に苛立つロー
『いえ、前にも言いましたがグレイスは中身が女ですから………』
今までずっと同じ宿の同じ部屋に泊まっていたんだし、海の上でも二人きりだったのだから、何かがある筈もない
むしろ、部屋を別ける方が不自然だ
(あらぁ?…もしかして…………)
何かに気付いたグレイスは、そっと船長さんに耳打ちしに行った
『……………………ッ』
固まる船長さんと
あら当たり?と、にやけるグレイス
暫く黙ったままでいた二人だが、グレイスが上機嫌で戻ってきて私と一緒の部屋で寝泊まりすることが決まった