第19章 ハートの海賊団にて・その2
ローの黒髪にエースを思い出したイリスは、頬を緩めて幸せそうな顔をしていた
それが気にくわないローは、彼女とは対称的に、眉間に不機嫌なシワを作る
目の前にいるのに自分のことを全く見ないイリスに対して、沸々と嗜虐的な感情が沸き起こった
「おい…………」
ソファに沈めた身体を起こし、イリスを背もたれに縫いつけるように押さえ込む
「えっ………あの…………あのッ………!」
突然の事態にイリスの思考は追いつかない
今、彼女の目にはローしか写っていない
頭の中もローの事でいっぱいだった
(そうだ………オレだけを見ていろ………)
満足そうに笑ったローの顔が徐々に近づいて来ていた
(えっ?えっ?…………何?……キ………す………?)
驚きに目を見開き、硬直したまま動けないイリスとの距離を詰めるロー
人気のない部屋、薄暗い照明、邪魔者もない
このまま………
と思ったその時、入口の扉が勢いよく開けられ、一匹の白熊が飛び込んできた
「いたぁ~!キャプテ~ン!イリスさんと仲良くなる方法教えて~」
「チッ………………ッ」
小さく舌打ちをしたローの顔からは笑みが消え、眉間にシワがより始めた
(えっ?ベポくん、今なんて………?)
イリスはベポの言葉に我に返り、頭をずらし、迫りくるベポを見た
ドスドスと床を響かせ
白い巨体が近づいて来ていた
船内通路を駆け回り、船長の居場所を探すベポ
その野生の鼻に彼の匂いを捕らえ、確信をもってある部屋の扉を開いた
「キャプテ~ン~!イリスさんと仲良くなる方法教えて~!」
やっと見つけた船長に嬉しくなって、元気よく話しかけ、近づくベポ
入口に背を向け、ソファに両手をつく船長の向こう側からイリスがひょっこり顔を出した