第19章 ハートの海賊団にて・その2
イリスは、話し出すきっかけを作ってくれたローに感謝しながら、これで聞きたいこともすんなり聞けそうだと会話の境目を狙って話だそうとしたら見事に被った
「あっ、すみません……えっと…」
「……俺のことはどう思ってんだ?」
ちょっと不機嫌そうにもう一度同じ質問をしてきた船長さん
そんなの決まってる
「今言った通りです。ちゃんとした人だと思ってますよ?」
ローの思惑は見事に外れ、イリスには伝わらなかった
普通こんな質問されたら相手を異性として意識してしまうものだが、全くそれが感じられない答えだった
「他には………」
「他にですか………博識ですよね?」
(海について色々聞いた)
「他……」
「お医者さんです」
(自分達を助けてくれた)
「他」
「とっても強いですよね?」
(手を切られたのは怖かった)
「………」
「優しいと思います」
(仲間思いだ)
「………」
まだ足りないのかと、次々にローについて思う事をのべていく
「この船の船長さんで、剣士でオペオペの実の能力者です」
「背が高くて、黒髪がエースに似ててカッコいいです」
ポッ……と顔が赤くなるイリス
ローも気づいたが、しかしこれはローに異性を感じた訳ではなく、恋人を思い出しているのだろう
その事に無性に腹が立ち、また廊下で感じた胸がモヤモヤするような気分になった
(あぁそうか………)
ローは自分の気持ちに気づいた
(俺はこいつの事が………)
廊下で会ったときからベポについて聞かれるのはわかった
しかし、自分だけを見てほしい、自分の事をだけを考えてほしいとの無意識の思いから、行動に出た
姿を独占したいため部屋に入り、心を自分で埋め尽くしたいと質問を繰り返した
子供じみた独占欲だとは思ったが、気づいてしまった今は、そんなこともうどうでもよかった