第19章 ハートの海賊団にて・その2
軽やかな足取りで通路を行くペンギン
実は特にやることもなかった
あの日以来、何だかんだでイリスさんとの時間が取れていなかった船長に対して気を利かせてみたねだが………
(イリスと船長が二人きりになれる良い機会だよな~)
邪魔が入らないよう、人払いでもしようかと考えていたら、前からシャチがやってきた
「おい!シャチ………ちょっと来い!」
声を潜めて手招きをする
こんな面白いこと話さずにはいられない
自分の手柄を褒めてほしいのと、人払いを手伝ってもらうので、今の現状を説明した
「……………なっ?だから頼んだぜ?」
船長は元々一人が好きだし、必要な時以外話しかけて来ない
人払いして、俺たちがそつなく仕事をこなしていけば、船長とイリスさんの一緒にいる時間が増えるはずだ
「えッ…?ヤベ~ッ!オレ、ベポに船長のとこに行けって言っちゃったよ~」
シャチの話によれば、ベポの方もイリスさんとの仲直りで悩んでいるそうだ
当事者同士が話し合えば直ぐに解決する、何とも可愛らしい勘違いだった
(よかったな、ベポ、イリスさん!)
ペンギンは二人の事を思い、満足そうに頬を緩めるが、数秒前に聞いた言葉をゆっくり思い出し、顔が青冷めてきた
シャチの顔色もかなり良くない
二人の間に沈黙が流れる
「なあ?オレ………ヤバイかも…………」
「だよな………オレもそう思ってたよ………」
このままでは、船長とイリスさんの二人きりの時間はベポによって邪魔が入る
船長はベポに甘いから、きっと船長の元にベポを送ったシャチが、お仕置きを受けることになるだろう
余計な気をまわしたペンギンも例外では無いかも知れない
「「行くぞッ!!」」
互いに違う方向に向かって走り出す
二人はベポが船長に会う前に、ベポを見つけ確保しようと船内を走りまわった