第19章 ハートの海賊団にて・その2
「船長さんか、ペンギンさんかな?」
イリスが去った医務室で一人彼女の最後の言葉を思い出す………
“船長さん”
この名前を聞いた時、グレイスは目覚めた時の事を思いだした
意識を取り戻して最初に聞いた言葉が、船長トラファルガー・ローの
『てめぇはイリスの何だ?』
だった
朦朧とした頭でも、睨みつける眼、威嚇する声、態度から伝わる敵意は分かるもの
ヤバイやつらに助けられた、とイリスを連れて逃げる事を考える程に警戒した
だが、それもグレイスが言葉を発するまでで、グレイスの存在が彼にとって無害と分かってからは、徐々にその敵意は薄らいでいき、同時にグレイスは警戒を解いた
自分が喋りだした時の船長さんの、驚いたような、疑うような、なんとも言えない微妙な顔がとても印象的だったのと、質問内容から彼がイリスに好意を持っているのがわかり、内心微笑ましく思った
(あぁ~イリスちゃんは、なんて罪作りな女なのかしら…………)
ニヤリッと口元を歪ませてグレイスはベットに潜り込んだ
船長さんと、ペンギンさん、相談するのはどちらでもよかった
そう、どちらでも…………
ただ、食堂にいたペンギンさんを最初に見つけたから、今までの経緯を話して、ベポ君に対する接し方をアドバイスして欲しかっただけなのに
「……………あぁ~!オレ用事を思い出したんだった~」
行かなきゃ、と早々に食堂を出て行ってしまった
去り際に
「船長は今、操舵室にいるッスよ!」
と、爽やかな笑みを残していった