第19章 ハートの海賊団にて・その2
落ち込むベポにシャチが近づく
「まだ怒ってんのかよ?」
人懐っこいベポが、こんなにも怒りを他人に向けるのは珍しい
(まあ、殺されかけて食料として見られたらオレでも怒るよ………)
ベポの気持ちも分かるため、強くは言えない
「うわぁ~ん!シャチ~」
いきなり白い巨体が迫って来た
「うおぉーッ!」
ズシンッと上に乗っかられ、押し潰される
もがき苦しむシャチ
「オレ、どうしたらいい?」
酸欠になりかけながら、ベポの悩みを聞いたシャチは一言
「船長に聞いて来いよ………」
と、船内への入口を指差した
ベポと別れて船内に戻ったイリスは、医務室へと向かい、まだ安静が必要なグレイスに会いに行く
ちなみに、グレイスが目覚めて最初の会話で、以前話題に上がった“グレイス中身は乙女問題”が解決し、船長さんもペンギンさんも納得していた
流石はグレイス、一言しゃべっただけで周りを納得させてしまうその個性
とても真似できません
イリスは、医務室につくとグレイスに、間違えて恩人を仕留めようとしてしまったことと、嫌われてしまったことを伝える
「はぁ~、私って最悪な女だわ~」
鬱々と愚痴るイリスの頭を優しく撫でるグレイスは、顔色も良く、随分回復していた
「ちょっと~そんな陰気な顔で見舞いに来ないでよね!」
手つきとは裏腹の辛辣な言葉
確かに、“グレイスの回復を喜ぶ満面の笑顔”と言う訳では無いけれど、そんな言い方無いんじゃない?
むぅっと口を尖らせて抗議の意をしめす
「そんなに思い詰めなくてもいいんじゃない?彼らに嫌われたとしても、私たちが感謝してる事にはかわりないんだし、仲良くなれなくても、あと数日の我慢なんだから…………」
そう、ずっと一緒にいる訳では無いのだから仲良くなったところで別れが辛いだけ、無理に仲良くなる必要は無い