第19章 ハートの海賊団にて・その2
青い空を見上げながら、大きく息を吸い込んで外にいることを噛みしめる
風呂場に保護の為にと隔離され、一歩も外に出れなくなってから、どれだけたったか………
風呂場は数人一度に入れるくらいの大きさがある、しかし、巨体のベポには四方を壁で囲まれた狭い空間でしかなかった
船長と仲間になだめられながら何とか我慢して毎日を過ごしていた
今日、やっと感染の危険が無くなったからと、船長の許可が出て、風呂場を飛び出したベポが真っ先に向かったのは甲板
青い空に冷たい空気、気候はベポの最も好きな冬を意味していた
「あぁ~生きててよかった~」
ゴロゴロと甲板を転げ回るベポは、いつの間にかつなぎ服も脱ぎ捨て、全身で冷たい風を受けていた
まぶしい太陽に新鮮な空気
自由に伸ばせる手足は動きを止めない
久しぶりにおもいっきり動いたベポは、眠気に誘われ、うとうとしだした……と、思ったらあっという間にイビキをかいて深い眠りに落ちてしまう
ベポにしたら狭い風呂場では、十分に眠る事も出来なかったのだろう
そんなベポの心境を知る仲間達は、ゆっくり寝かせてやろうと、船尾には近づかずにいた
スヤスヤと気持ち良さそうに眠るベポ
至福の時間を堪能していたが、突然の衝撃に一気に目覚める
目に写るのは船長ロー
彼の隣に倒れ込み、その目線を追うと自分が居たはずの甲板には見知らぬ女の子と、木箱の成れの果てが散らばっていた
そして低く唸るような声で船長が一言
「てめぇ、どういうつもりだ!」
ローも離れた所からベポを観察していた
閉じ込められていたストレスで、身体に異変がないかを診る
後からしっかりした診察もするが、今はゆっくりさせてやりたい
しばらく見ていると、甲板を掃除中のイリスが現れベポに驚き、目を丸くしている
そう言えば”隔離している奴がいる“とは言ったが、それが白熊だとは伝えていない
突然、白熊がいたらそりゃ驚くよな
説明の為、声を掛けようとしたその時
イリスは、いきなり駆け出しベポに向かって蹴りを放つ
その行動に驚き、咄嗟に能力で近くの木箱と位置を入れ替える
木箱はバラバラ
彼女の蹴りは、ベポの脳天目掛けて降り下ろされていた