第17章 ハートの海賊団にて
ペンギンは、イリスを部屋へと送りながらも、食堂内の事を心配していた
彼女が食堂から出る時に放った爆弾発言で今、あそこは大変な事になっているだろう
さっきまであんなに機嫌が良かった船長も、今ごろ氷点下の眼差しで不機嫌オーラ全開になっているはずだ
(早く戻って仲間達を助けてやらなきゃなぁ~)
それは、ローの扱いに慣れた自分の役目だ、もしくは、天然癒し系ベポの………
「ちょ…ちょっとペンギンさん………待って………」
随分後ろからイリスさんがよろよろと歩いてくる
どうやら急ぐ気持ちがまわりを見えなくしていたようで、彼女を部屋へ送るはずだったのに一人で先に進んでしまっていた
「すみません!イリスさん、大丈夫ッスか?」
駆け寄り、手を貸す
酒を飲まされ過ぎて顔色が良くない
「ごめんなさい……私、お酒は弱くないはずだったのに………」
赤かった顔は、今や血の気が引いた蒼白
病み上がりと言うこともあるが、それよりもこの船にある酒は………
「まだ病み上がりなんで仕方ないッスよ!それに俺達の故郷、北の海(ノース・ブルー)の酒は他の海の酒より度数が高くて、飲み慣れてないとすぐ酔っちゃいますから」
ハハハッ…と、笑うペンギンにイリスは、へらりっと力なく笑い返した
ゆっくりとイリスの歩調に合わせて歩くペンギンは、部屋までの道中、イリスに
さっき言った事は本当か?エースとは誰?
など、気になる質問をいろいろぶつけてみた
体調が悪い所を申し訳なく思ったが、意外にも彼女は嬉々として話してくれた
「エースは幼なじみで…………三年前に置いていかれて…………今は白ひげ海賊団にいて…………見つけたら一発ぶん殴ってやるのよ~」
酔いも手伝い、彼女の口はだいぶ軽くなっていた
いや、恋人の話が出来て嬉しいのだろう
ニコニコと幸せそうに話すイリスさんは、とても綺麗で、ウソをついているようにも見えない…………
(あぁ~いっそ、ウソであって欲しかった)
ペンギンの心の叫びは彼女に届かず、部屋に着くまでずっとエースについての、のろけ話を聞かされる事となった