第17章 ハートの海賊団にて
なんて間の悪い奴なんだ
その場にいたロー以外の者が、シャチに対して思った感想がこれだ
よりにもよって今、このタイミングで戻ってくるなんて……
そんな仲間の思いなどいざ知らず
「うめぇ~!ベポの奴が"食べなきゃ治せない!"とか言って、オレの飯まで食っちゃってよ~」
ガツガツとご飯を頬張るシャチ
まわりの沈黙など気にもせず、次々と皿に箸をのばし、料理を平らげていく
「そういや、イリスちゃんは?」
「ッ……………!!!」
今、その名前は禁句なのに…………
イリスの名前に、ビクリッと反応する仲間達
青ざめた彼らを気にもせず、モグモグと口を動かしながらシャチは更に続けた
「なんか可愛い格好してるって聞いたんだけど?見たいな~?どこかな~?」
キョロキョロと食堂内を見渡すと、最奥の席に座る船長とバッチリ目があう
「ゥゲッ…………………船……長……!?」
不機嫌オーラ全開でこちらを睨み付けている
シャチは、急いで視線を反らし、仲間達を見るが誰一人として現状を説明してくれない
いや、目すら合わせてくれない
みんな、背を向け離れていく
船長と自分との間が徐々に開けてきた
身の危険を感じ、そっと立ち上がり、入り口に向かってゆっくりと歩き出すが………
「おい……誰が風呂場から出ていいって言った」
船長の低い声が後ろから聞こえた
「ハッ……ハイ!めし、ベポがオレの分まで食っちゃって、身体は直ったけど腹へってて、今、船長の機嫌がいいって聞いて、こっそり戻っても大丈夫かな~って思っちゃいました!」
すみません!!と、正直に全てを話したシャチだが、
「ふんっ……腹は満たされただろ?ベポが待ってるぞ?」
ブンッ、という音と共にシャチのまわりを、半円のサークルが囲む
「へっ?またぁ~~~~?」
切り刻まれた体が無情にも床に散らばる
今日で、2回目………
どちらもシャチには、理由が分からないまま、船長からの仕置きを受ける
シャチは悪くない………ただ間が悪いだけなのだ
船員達は、いろいろ残念で、可哀想なシャチの体を優しく風呂場に運んだ