第17章 ハートの海賊団にて
その後、食堂では和やかな宴が続き、イリスは彼らが海賊であることを知った
最初は驚いたが、自分達を助けてくれたし、一緒に食事をする中で、彼らがただの無法者では無いことは分かっていた
海賊の中にもシャンクス達のようにいい人達もいる事をイリスは知っていたので、すんなり受け入れることができた
(船長さんは少し怖いけど、皆いい人達ね)
イリスはこのハートの海賊団が好きになっていた
しばらくしてペンギンが、病み上がりのイリスをそろそろ休ませてはどうかと、船長に告げる
仲間達に囲まれ、笑顔で話すイリスだが、顔色が優れない
どうやら酒を勧められすぎたようだ
(あいつら加減ってものを知らねぇのか……)
そろそろ部屋に戻れとイリスに言ったローにブーブーと非難の声が上がる
それをひと睨みで黙らせ、ローはイリスを下がらせる
イリスとペンギンが、食堂から出ようとしたところにローから声がかかる
「聞き忘れていたが、エースってのは何者だ?」
病床のイリスが呟いた名前……グレイスのことを聞いた時に一緒に聞いておけば良かったのだが、グレイスのあまりのインパクトにすっかり忘れていた
ローは、どうせグレイスのようにたいした奴ではないと、高をくくって気楽に聞いたのだが………
「エース?エースは私の恋人ですよ?彼を捜すために私は海に出たんです」
イリスは後ろからの声に振り返り、笑顔で答える
にこりと、極上の微笑みを残してイリスは食堂を後にした
扉が閉まる音だけが室内に響く
静まりかえる食堂
全員が入り口に注目したまま動けない
振り返り、船長の顔を見ることが出来ない
和やかな宴は一瞬にして終わりを告げた
「………………………………………」
「……………………………………」
誰もがローから目を背け、無言の威圧感を背中に受けるなか、
「あぁ~腹へったぁ~」
長い静寂を破り、バタバタと足音を響かせ、食堂に入って来たのは、風呂場にベポと共に監禁されているはずのシャチだった