第16章 空の上 海の中
イリスは今の状況を考える
場所は彼らの船(潜水艦)の中
まわりは海の底
自分は病み上がりで
グレイスの意識はまだない
逃げ場も無く、人質をとられているも同然のこの状況
目の前の男はかなり強い
勝てるかどうかわからない
それにグレイスを見捨てることなど出来ない
イリスは絶望的な状況下で、愛しい男の名を思う
(エース…………)
会えないまま、自分は死んでしまうのか………
人知れず死んで、エースはずっと私を待ち続けるのだろうか?なんとか自分の死をエースに伝えたい
目の前の男に頼むのは癪だけど、ダメ元で最後のお願いをしてみるイリス
「私を殺した後も、グレイスの治療は最後までしてあげてね?あと、エースに私の死を伝えて欲しいわ………」
観念して目を閉じたイリス
いきなり何を言い出すのか………
彼女のトンチンカンなセリフに笑いがこみ上げてくるロー
(オレに殺されると思ってんのか?)
律儀に遺言まで遺して、おかしなヤツだ………
(グレイスと、エースか…………)
彼女の最後の言葉(勘違い)に出てきた名前
一人は、初めて聞く名前
もう一人は医務室で聞いた名前だ
もやもやした気持ちでイリスを見つめる
無防備に向けられた顔、眉間に皺をよせ、ぎゅっと目を閉じ、最後の瞬間を待っている
(チッ………そんな顔すんじゃねぇよ)
ローの手は、ゆっくりとイリスの顔に近づいていく
覚悟を決めたイリスは最後の瞬間を待つ
エース、ルフィ、ガープ、マキノ、シャンクス…………大切な人達の姿が思い浮かぶ
こんな船に一人で残していくグレイスのことも心配だわ………
でも、やっぱりもう一度エースに会いたかった………
…………………まだかしら?
すっかり死ぬ気でいるイリスは、いまだその時が来ないことを不思議に思った
「ッ……………!!!」
思った瞬間、突然の衝撃がイリスを襲った