第16章 空の上 海の中
振り返ると、そこには空中を舞う身体だったパーツ達
叫び声と共にそれらは虚しく床に落ちていった
目の前で起こった光景に絶句し、思考が追いつかないイリス、動くことも出来ずただ見つめる
当たり前の様に身体のパーツを集める人達
当たり前の様に刀をしまい近づいてくる男
人が殺されたのに
誰も、何も、文句を言わない
こんなことが日常的にまかり通っているのか?
イリスはこの異様な光景から、一気にこの集団への不信感が高まった
そして、更にイリスが許せなかったのは、近づいてきたローが言ったひとこと
「クククッ……あいつのバカは死ななきゃ治んねぇな~」
ヒュンッ
風を切る音がした次の瞬間
頬に衝撃が加わり、軽く体勢を崩すロー
「あなたっ、自分の仲間を何だと思っているの!」
いきなりの出来事に今度はローの思考が追いつかない
こちらを睨んで、オレに放った手のひらをプルプル震わせているイリス
殴られたのか?
このオレが?
じんわりと頬に熱が集まりだす
「この船でオレが何をしようが、オレの勝手だろうがッ……」
次第に怒りがこみ上げてきて、感情のまま凄んでイリスを壁際まで追いつめる
「いくら貴方が船長だからって、仲間を………人の命を軽々しく扱うなんて医者として失格よ!」
普段のイリスは睨まれ、凄まれ、怒鳴られたならば、畏縮し言葉も出なくなる
しかし彼らが医者の集団で、自分達を助けてくれたと言う事実もあるいい人達なのに、こんな事をするなんて許せなかった………いや、信じたくなかった
「あぁっ?何言ってやがる、オレは仲間になったやつは何があろうと見捨てねぇ!」
何をいきなり言い出すんだ?
オレは、仲間を見捨てたことなんかない
それに医者として云々も、身に覚えが無い
「ッ………白々しい!今、私の目の前で仲間を斬り殺したじゃない!可哀想に………」
うるうると、目に涙を湛えながらイリスは斬り殺された人を悼む