第16章 空の上 海の中
(あんな風には、なりたくねぇよ~)
ホッとして窓の外を覗きながらはしゃぐイリスと、船長に背を向け歩きだしたシャチ
しかし、無情にも青白いサークルがシャチを包む
「風呂場は暇だろ?ベポに暇潰しがてら治してもらえよ」
「あ……のっ……船ちょ……ギャーッ!!」
ローはシャチを細切れにした
頭とその他、多数のパーツに別れたシャチ
しくしく泣きながら仲間達に抱えられて、その場をあとにした
怖がっていたのが嘘のように、イリスは窓の外にくぎ付けだった
潜水艦なんて見るのも乗るのも初めてで、見える全てが珍しく、楽しく、面白い!
壁の向こう側は大量の海水、能力者にとって海は天敵のはずだが、イリスは溺れた経験が無いためか、白鳥(水鳥)だからか、あまり恐怖を感じない
船長さんが、いろいろ説明してくれる
船のこと、海のこと、海王類や魚のこと、医者としての知識もさることながら、その博識ぶりに素直に関心して、ついつい質問ぜめにしてしまったが、丁寧に答えてくれた
(いい人だなぁ………)
命の恩人で、お医者さんで、何でも知ってる凄い人
イリスの中で、ローの評価はぐんぐん上がっていった
しかしまだ彼女は知らない
彼らが海賊であるということも、ローがイリスを助けた時に見せた怪しい微笑みの意味も………
船長さんが仲間に話しかけている
邪魔してはいけないと思い、意識を窓の外に向ける
だが、いきなり聞こえた叫び声に振り返ると、そこには切り刻まれた身体が転がっていた
あまりの事に声も出ないイリスは、呆然とその光景を見ていたが、切られた人とその仲間の人達は、手慣れた様子で身体のパーツを集めて立ち去って行った