第16章 空の上 海の中
医務室では二人の治療が続いていた
二人とも意識不明のままだがイリスの脈拍は安定してきていた
(症状が軽い、やはり抗体が出来ているのだろうか…………)
医者としての探究心がふつふつと沸き上がってきた、今すぐにでもイリスの体を調べたい……………
ローは、はやる気持ちをなんとか抑え彼女の回復を待つ事にし、ペンギンに次の指示を出す
するとそこへ、ベポとの伝達役に置いていたシャチが入ってきた
「キャプテン、ベポが風呂場から早く出たいと言って聞かないんッスよ………」
「まだダメだ………こいつらが回復して船内を消毒してからだな」
クイッと顎で指された二人は診察台に横たわり、まだ意識が無いようだ
「あの………それっていつ頃になりますか?」
ベポの限界は近い、このままではドアを蹴破って出てくるかもしれないと、シャチはローに食い下がる
「あぁ?………早くても1週間ってとこか?」
「えぇっ!無理っスよ!そんなにベポをなだめきれません」
悲痛な声をあげるシャチ
「船長からベポに説明してやって下さいよ~」
もう自分達では無理だと言い、ローに助けを求める
ローは、やれやれ、といった表情で医務室を後にした
実際、自分はここにいてもやることはもう無い
イリスの症状は落ち着いているし、男の方もペンギンがいれば問題ない
今の状況ぐらいベポに説明してやろうと、ローは風呂場に足を進めた
(ここ狭い………窮屈だなぁ~)
ベポは風呂場が嫌いだ………
ついでに風呂も嫌いだ…………
狭いし、一人が寂しいし、身体を乾かすのもめんどくさい
ベポは以前濡れたまま船内をうろちょろして船長からお叱りを受け、それ以来、身体を乾かすまで風呂場から出るのを禁止されてしまう
ベポは、ますます風呂嫌いになってしまった