第16章 空の上 海の中
医務室にはローとペンギン、そして診察台に横たわる男女
バラした船員を追い出したローは先程までの考えをペンギンに話し、意見を聞いてみる
「なるほど………症状の違いですか………」
言われてみると二人は肌の色がずいぶん違ってきている
男の方は舟の上で見たときよりも顔が、濃い赤黒になってきていたが、女の方は真っ赤ではあるが先程から変化は無い
「こいつらの舟の大きさで感染時期が異なるとは考えにくい……」
確かに……と、頷きながらペンギンは交互に二人を見比べ、出会った時からの事を思い出していた
「う~ん、確か鳥からの感染でしたよね………彼女、半分白鳥じゃないですか?体内に何らかの抗体があるのかも………」
「………ッ!それだな………」
ローもイリスに出会った衝撃で忘れていたようだ…彼女が能力者であった事を……
《ルーフス病》は鳥が発病しても命の危険は無い、ただ目と皮膚が赤くなるだけだ
「………チッ」
ローは、倒れている鳥を見たときにその違和感に気づかなかった自分を責めた
いや、イリスに出会って冷静さを失っていたからだろう………これではイリスに群がっていた奴等と変わらないではないか………
乱暴な歩き方に繰り返される舌打ち
あきらかに不機嫌になった船長と実質二人きりのペンギンはびくびくしながら横たわる二人に治療を施していた
「えっ?それほんとっ!?」
風呂場に閉じ込められたベポは、仲間から船長が舟の男を助けてくれているのを聞いた
隔離前に必死で頼んでみたものの、船長は感染症の恐ろしさをよく知っている………危険を船に持ち込むことはしないだろうと、諦めの気持ちで一人風呂場でシャワーを浴びていたベポはドアの外からの声に目を丸くして驚いた