第16章 空の上 海の中
ローは再び白鳥に向き直り再度診察した
症状は先程と変わらない
聞こえた声は気のせいかと思った
だが、白鳥は話かけてきた
「あ…なた……お医者、さん?」
段々と目が、かすんで周囲の様子が分からなくなってきた、だがイリスは自分を触る手つきから、この男はあの船の船医なのだと思い話しかけたのだ
絞り出すような声で話し出した白鳥に驚くが、自分達の船にはしゃべるクマがいるのを思いだし、二人は冷静に対処した
「ああ、オレは医者だ…………貴様何者だ」
イリスの問いかけに答えた船長の後ろで油断無く彼女を警戒するペンギン
側近である彼は、船長が《病気でしゃべる怪しい鳥》なんかに近づいて欲しくは無かった
人にも感染するようだし万が一、船長にうつったらと、考えてしまう
「わた……は、…モンキー……D ・ イリス………た…すけ……て……くだ………ぃ……」
女はそう言うと意識を失ってしまった………そう、《女》がである
船長の傍らに横たわっていた白鳥は、みるみるうちに姿を変えて女(女の子?)になっていった
「「ッ…………!!」」
意外な変身ぶりに二人は息を飲む
目の前の彼女は、肌こそ《ルーフス病》によって真っ赤であるが整った美しい顔だち
そして手配書のモンキー・D ・ イリスと同じ刺青
多分、悪魔の実の能力者であろうと当たりをつけていたトラファルガー・ローでさえ驚きを隠せずにいた
「船長、こいつは……」
「あぁ………いい拾い物をした……」
横たわるイリスを抱き上げ、船へと向かうトラファルガー・ローの口元は怪しく弧を描いていた