第16章 空の上 海の中
穏やかな水面が徐々に盛り上がり、大きな波をつくり小舟を揺らす
水中から巨大な潜水艦が姿を現し、波で少し遠ざかった小舟を見下ろした
ベポが見ていた景色を共有するクルー達
船長であるトラファルガー・ローも自身の疑問を解決するため渋々甲板に姿を現す
「ほら、見て!苦しそうだよ………」
ベポに促されてそちらに視線をやったローは異変に気づく
倒れているのは人だけでは無く、傍らにいる鳥の様子もおかしかった
気を失っていたイリスは舟の揺れと水しぶきで目を覚ました、だが体が全く動かない
視線の先にいるグレイスも全く動かないし、目だけでは無く身体中が赤い
自分もそうなのかと手を見るが白くフサフサな羽が見えただけだった
「…………………」
自分が鳥形だったことも忘れていたようだ
(いよいよヤバイわね…………)
朦朧とした意識の中グレイスを見ると、その向こう側から異様な形の船が近づいて来ていた
小舟に近づくにつれ倒れている男の様子がはっきりしてきた
赤い顔に大量の汗
息も荒く
意識が無いようだった
ベポは小舟に乗り移るとすぐにその男の容態を確認した
体温、体の外傷、手際よく調べるがどこも異常は無かった(脈拍は速いが……)
「あれ?……風邪……じゃないのかな?」
首を捻るベポは自分の予測が外れたことで困惑していた
どうしよう……とローを見るが、彼は舟を見回し頷いている
舟を見回したローは自分の疑問が解決したことに満足していた
小舟に取り付けられたロープと、鳥の足元にあるロープの束から推察するに、空を飛んで移動していたのだろう
(珍しい事だ、鳥も飼い慣らせばこんなことも出きるのか)
と、ひとりで頷き自分の船に戻ろうとした所で困った顔をしたベポと目が合う
「キャプテン……ちょっと診てあげて……」
申し訳なさそうなベポの顔
足元に倒れている男
二つを交互に見たローは深いため息をついた