第16章 空の上 海の中
倒れてる?病気か遭難だろうか?
どちらにしても俺達には関係ない
「それがどうした、潜望鏡をしまえ……潜るぞ」
抑揚のない冷たい声
船員が指示通り動き出す中、ベポと呼ばれた白クマは訴える
「苦しそうにしてる、助けてあげようよ?俺達医者だよ?」
倒れた人をその目に写して情でも沸いたのか
ベポは人助けを申し出てきた
苦しそうにだと?病気か?
それならば、なおのことこの場から離れるべきだ、艦内に変な病原菌を持ち込まれてはたまらない
まだまだ心が純粋で海賊になりきれていない白クマを睨む
自分から厄介事を背負い込むなど信じられない
「医者だが海賊だ、善意で人助けをするような集団でもねぇだろ……潜れ」
操舵室に響く船長命令
話は終わりだ、と踵を返し部屋を出て行こうとしたトラファルガー・ローの背中にベポは更に声をかける
「でも……キャプテン気になるでしょ?」
「おいベポ、もう止めとけって……」
ペンギンと書かれた帽子を被る男に制されるが構わず続ける
「………どうやって現れたか気になるでしょ?」
「「!!!」」
いきなりソナーが捉えた水音
それまでは海上にも海中にも不審なものは何もなかったのに突如として現れた小舟
今も近くに船等は無く、いったいどうやって現れたのか………第一、なぜ小舟なんかでグランドラインを航海出来ているのかが解らない
「確かに気にはなるがリスクを考えろ、それに面倒くせぇだろ」
見ず知らずの他人を助ける意味がわからん
ガシガシと頭を掻いてベポを睨む
「じゃあオレが診るよ!皆の手は煩わせないから……」
顔赤いし、きっと風邪だよ!
オレだけでも大丈夫だから
と言って強引にローに迫る
周りはハラハラしながらその様子を見守っているが、ベポはローを信頼しきっている熱い眼差しで見つめる
「…………応急処置だけだ」
ベポの視線に折れたローは、診てやるだけだと言って艦の浮上を許可した