第16章 空の上 海の中
1時間ほど飛んだが一向に島は見えない
この際、船でもいいから出会わないかと思ったが、それも全くない
イリスの体力もそろそろ限界で、視界がぐにゃぐにゃ揺れる
(こんな海の真ん中で病気だなんて………)
ゼェゼェと、苦しそうに息をするグレイス
汗もひどい
たまに声をかけるがやはり返事は無い
水面スレスレをよたよたと上下しながら進む
いらない荷物を捨て軽量化したが、それでも弱った体には舟は重たい
自分が倒れれば二人とも助からないのは分かっている、でも…………
「ッ……………!」
激しい水音で意識が戻る
一瞬気を失って海に落ちてしまったようだ
高さはそれほどではなかったので沈没や、浸水は避けられたが、イリスは衝撃で舟に体を打ちつけてしまう
「うっ………」
白鳥の体が舟の上を跳ねる
水面上に何かがキラッと光り弱った目を刺激し痛い………
新たな体の痛みに限界寸前だった意識の糸がプツリと切れた
「キャプテ~ン!キャ~プテ~ン!」
操舵室に緊張感のない声が響く
潜望鏡を覗く白クマがこの艦の船長であるトラファルガー・ローを呼んだ
「なんだベポ?何が見える」
「舟かな?小舟だよ」
少し前からソナーが水音を感知していた
まわりに船はいないのに水面に断続的に何かが落ちている音がする
ここ、グランドラインでは小さな変化を見逃しただけで、全滅なんて事はよくある
船長として報告を受けたトラファルガー・ローは自室から操舵室に移り周囲を警戒していた
潜望鏡を覗きこんだまま白クマがはなす
「人が乗ってる!あと鳥も」
ただの舟なら驚異ではないなと、トラファルガー・ローはまた潜水の指示を出して自室に戻ろうとしたが
「倒れてる………」
白クマは心配そうに呟いた