第14章 2つの手配書
固まるエースを取り囲み、手配書を覗きこむ
「これが弟か~」
「3000万ベリーね~なかなかじゃないか!」
「で、恋人は?」
「俺たちゃそっちが見たいんだよ!」
「名前はなんだったか?」
「たしかイリスちゃんじゃ…………」
2枚目の手配書に伸びた手と
耳に入った〈イリス〉と言う単語で、我に返ったエースは
「っ……………!!!」
グシャリと手配書を握りしめ、仲間を掻き分け飛び出した
「ダッ…ダメダメ、ダメだ!!ぜってぇ見せねぇ!」
こんなイリスの姿を見せられるものか!だいたい何で賞金首になってる?村で待ってるはずじゃ………?
後ろに手配書を隠し、仲間に向かって拒否の意を示す
不満そうな仲間達のヤジも気にせず、いろんな事が頭の中を飛びかう
そして動揺しまくった彼は、後ろに迫る人影に気づけなかった
「おやおや♪やっとかわいい弟分の彼女が拝めると思ったら、なんってぇ~刺激的な姿なんだ~?!」
背後から迫ってきたサッチにヒョイッ!と手配書を引ったくられて、まじまじと見られてしまった
「んなッ!サッチ!!!」
気配に気づかなかった自分の不甲斐なさに落ち込み、ニヤニヤと鼻の下を伸ばすサッチに怒りを覚える
「てめぇ………返しやがれ!!!」
額に青スジを立てて怒るエースを無視してサッチは、
「皆、見てみろよ!!イリスって言うんだ!めちゃくちゃ可愛いぞ~!」
まるで自分の恋人を紹介するかのように手配書を見せている
船員達は手配書を見ることが出来て嬉しいが………そんなサッチの後ろには、身体からゆらゆらと陽炎をのぼらせ、般若の形相で睨みつけるエースがいた
ひきつった顔の船員達は、そろそろと後ずさる
「ん?どうしたんだお前ら?これ見てみろよ!」
手招きするサッチ、しかし全員、首を横にぶんぶん振りながら後ずさるのを止めない