第12章 嫌な再会
引き裂かれるたび顔をだす刺青に、お頭と呼ばれる男は興奮していた
《左胸の上に鮮やかに広がる炎、4羽の鳥》
《左腕には荊が巻きつき、肩には肌よりも白い薔薇》
刀によって、うっすら血の滲むその肌は、何とも扇情的で男の欲情を駆り立てる
自分を睨み付ける蒼い眼は、怒りと羞恥が入り交じり微かに潤んでいた
「俺のものになれ…」
たまらず手をのばし、その肌の感触を楽しもうとしたその瞬間…
男の手はあらぬ方向に折れ曲がっていた…
刀を持つ手に力が入らず、ダラリと揺れる
「グアァーーーッ!!」
イリスは刀を蹴りあげ、間合いを詰めると人質の少女を抱き寄せ、男の顔面に蹴りつけた
衝撃音と共に民家の壁に穴を開け、男は気を失った…
人質がいなければ所詮イリスの敵ではないのだった
(はぁ~ヒドイ格好……)
冷静さを取り戻したイリスは、自分の姿に落ち込む…
蹴りつけた衝撃でイリスが着ていたロングスカートは破れ、深いスリットができていた
ブラウスは切り裂かれ、上半身はキャミソールとブラのみ……所々で血が滲み、顔には拳がかすった擦り傷がある
服を着たいし、手当てもしたい…
しかし船長である男は倒れたが暴れまわるクルー達がまだ街にはいた
イリスは人質の少女をゆっくり降ろして、殴られた顔を手当てするようにと、安全な所に逃がす
そこへグレイスが大勢の人達を引き連れてやって来た