第11章 看板娘
「その潤んだ瞳は深海に眠るどんな宝石よりも余を捕らえて離さない…」
滔々と連ねられる美辞麗句
(えっと…これはどう対処したらいいの!?)
後ろに視線をやると、強面の側近らしき人が何人か付き従っている
さらにその後ろには困ったような哀れむような顔をした人だかり達
「ああ!!月の輝きも君にはおよばず、夜の標を明け渡すだろう麗しの君…」
(まだ言ってる…)
『どうしよう、グレイス…』
こそっと話しかけるが、グレイスは無言で手を振り面倒くさいことを私に押し付けてきた…
「はぁ~」
ふと出たため息、王様の前で失礼だったかな?と恐る恐る顔をあげるが、
「おぉ!! 新緑の森に羽ばたく小鳥のような囀ずり!! その調べに胸打たれ、余の心臓は今にも鼓動を止めようとしている…」
大袈裟な身ぶり手振りが加わり、王様は自分に陶酔しきっていた
「…………」
店の前でいつまで一人芝居やってんだか…
取り巻き達は無言でその様子を見ている
慣れてるのだろう
「あの~いらっしゃいませ!? 何に致しましょうか?」
これ以上聞いてられないと、イリスは一応目の前にある商品を薦めてみた…
「こちらは、吊るすタイプで…」
一つ一つ紹介していく…
「いくらかな?」
(あっ!良かった、普通になった)
普通に会話できる状態に安堵して、いつもどうりの笑顔で接客
「どちらの商品ですか?」
ガシッ!!
「!!!」
いきなり手を掴まれ、体が強ばる…
「君はいくらかな?」
握った手に力を込め、王様はイリスの顔をじっと見つめる