第11章 看板娘
客層が変わってから何日かが経ったが、店の売り上げは好調である
相変わらずイリスは客たちの熱い視線に気づかないが、それが逆に彼らを再び店へと足を運ばせる
「いらっしゃいませ♪毎日ありがとうございます」
「こちらが新作ですよ」
「お値段は…」
毎日来ているのに気づかれない…可哀想な人もいる
グレイスも調子にのって段々と値段を吊り上げていった……それでも売れるのだからイリスの効果は絶大である
勿論、商品の質も上げているのでグレイスとしても作りがいがあった
そんな日々を過ごすなか、今日もいつも通りに店を開けているが、なんだか客足が少ない…!?
周りの店もそわそわしてるし…なんで?
理由はすぐにもわかった、この国の偉い人が街に来る日らしい
ザワザワと広場の人だかりがこっちに向かってくる…
『ねえ!?こっち来るんじゃない?』
グレイスに、どうしようと意見を求める
『ヤダほんと!?いつも通りでいいけど…』
怒らせないようにね、と念を押される
イリスは珍しげにチラチラ見ている
グレイスは関わらないようにか、いつもより大人しい
いつの間にかイリス達の店の前にやって来た人だかりから、一人の男が歩み出して近づいてくる
「余はこれほどの衝撃をかつて受けた事がない…その漆黒の闇を切り取ったかのような黒髪は長い夜明けを待ち朝日に輝く朝露の煌めき…」
「…………」
(なんだこの男は?)
よくまわる口だな~と、声を出そうとした時後ろから…
『その人、この国の王様よ!!』
グレイスの言葉にビックリして、もう一度目の前の男をみる
初めてみた偉い人は舐めるような視線でイリスを見つめていた……