第10章 初めての……
「なあマルコ…俺、あいつに無理させてたってことか?」
しばらく黙って考え込んでいたエースが質問してきた
今言ってる《あいつ》とは例のイリスって恋人のことだろう
イゾウの話でかなり不安になっているようだ、明らかに元気が無い
「さあ…どうだろうねい?こればっかりは本人に聞くしか本当の所は分からないよい」
「……」
エースの顔は沈んだままだった
「女ってのは、多少なりとも常に自分を偽って生きてるものじゃないかよい?」
(ちょっとフォローしとかないとねい)
「……?」
「例えば化粧があるよい?」
化粧なんて必要ないような女でも必ず化粧をする
あれは俺から見れば、《偽りの顔》ともとれるが、女にはそれが自分の顔、造り上げた顔がその女自身になっている
「無理してたらそれが本当の自分になっていったってことか?」