第5章 Episodes櫻井:優しさの裏と表
本当に消えちゃったら、
あの子はどうするのかな
泣くのかな、怒るのかな
ううん
きっと心ではなんとも思わないだろうな
携帯も何も持参せずに来たから
連絡手段がない
こんだけ時間も経ったのに、
閉じ込められてから
足音も何も聞こえないから
ここは使われてない場所なんだろうな
このまま誰にも気づかれないのかな
嫌だな。そんなのだけは。
何もしてないのに、
なんでこんなに嫌われるんだろ
頑張ってるのに
何がダメなのかな
ねえ、分かんないな、私には。
教えてよ、ヤスくん
ーーーーー
ーーー
いつの間にか寝ていて、
パッと目を覚ますと目の前には
ヤスくんの姿
「…っ!!!よかったあ!!」
嬉しそうに抱きつくヤスくん
寝起きで頭が働かない私は
とりあえず抱きしめ返した
「大丈夫?怪我は?」
「へーき、慣れてるよ
お腹蹴られただけだから
皆には内緒にしてて」
へらぁ、と笑うと
ヤスくんは目をじわじわ潤ませた
そして抱きしめたまんま、
ちいさく呟いた
「…ごめんっ、
そんなのに慣れんといてよ…!」
「へへ、ごめんヤスくん。
泣かないでよ。ありがとう」
ああ、危なかった。
ふわっと思い出してた
でもね、不思議だった
夢に出なかったんだよ、
なんでだろうね