第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
「私は、別に」
救おうなんて考えてなかった。
相葉さんの時だって、
話を聞いて思った事を言った迄で
それに他人のトラウマを救おうなんて
そんなこと、何も知らない私が
話を聞いただけで
どうにか出来るわけない。
過去の重みは、
本人にしか分からないのだから。
「でも錦戸さんは強いと思います」
「つ、よい…?どこが?
他人を傷つけて拒絶して、
保身に走ってるだけやで、俺なんか」
「痛みを多く知ってる人は、
その分だけ他人に優しく出来る
それって、強みだと思いませんか」
確かに軽々しく可愛いと言って、
女の子をちやほやしといて
ポイ捨てするように捨てて
それは優しさとは言えないけど。
でも、
寮の皆から女の子を遠ざけるため、
4人が傷つかないようにするため
そう考えたら、
小さな優しさと思いやりにならないだろうか
「…だって…、
俺にはこうするしか分からんから…!」
「大丈夫です。
もうああ言うことをしなくても
4人はちゃんと分かってますから」
ただ、愛されたかっただけ。
何もない空っぽな自分でも
好きだと言って欲しかっただけ
それが歪んでしまっただけなのだ。
「お父さんとお兄さんは、
いまはどうされてるんですか」
「父さんは病院に入院してんねん
もう働ける体じゃないから、
兄ちゃんが働いて世話してもろてんねん」
「じゃあ…」
「兄ちゃんは今は真面目。
母さんとも縁切ってる聞いた。
俺がひねくれてるだけやねん」
そう笑った錦戸さんは、
以前よりも
明るく笑っている気がした。