第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
バンッ、
微かに聞こえた物音に目を覚まし、
起き上がった。
カチコチと時計の音が響いていた。
母さんは…、
まだ戻ってきてへんらしい
「おそいな」
立ち上がって探しに行こうと、
ドアノブに手を伸ばす。
『…子ども居るやなんてな
ユウマくんとりょうくんやっけ?
めっちゃかっこええやん』
『ふふ、ありがとお
まあ、あの2人金儲けの道具には
使えそうやしな。まだまだ手放さへん
やからええ顔して媚び売ってんねん』
『最低な母親やな(笑)
まあ確かに稼ぎ頭になってくれそーやな』
そんな会話が聞こえた。
ズキズキ痛んだ胸
「おお、亮やんか
どないしてん。こんなとこで」
裏口から入ってきた兄ちゃんが、
ペットボトルを持って椅子に座った。
「ちょっとな」
「まあええわ。母さんは?」
「さあ。表に居るんとちゃう
さっき出てって寝てもうてん
やから分からへんわ」
「そっか。」
兄ちゃんはふーんとうなずき、
携帯をいじり始めた。
ニヤニヤと携帯画面を見つめていた。
「なにニヤついてん」
「んー。客が増えて来たからな。
きっと母さんも喜んでくれる」
「…、でも母さん、
俺らの事なんか…」
「知ってる。道具やろ
聞いた。俺も盗み聞きしたから」
そう言った兄ちゃんは、
相変わらずまた嬉しそうに笑って
携帯握りしめ外へ出て行った。