第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
「ただいま〜、はぁ疲れた」
帰宅した父さんが
俺の顔を見るなり心配そうな声を出した。
「どうしたん、暗い顔して。
兄ちゃんは?2階で勉強?」
「に、兄ちゃん、
お腹空いて我慢出来んくて
コンビニ行ってんねん、遅なるって」
「そうか。んじゃ、
2人分でええな。少し待っとってな」
鼻歌歌いながらキッチンに入る父
騙してる罪悪感でいっぱいだ
本当は母親の所だなんて、
言えるわけない、言えっこない。
『ママな、自分のお店持ってんねん
まあ、夜の店やからいい印象ないけど
楽しいとこやねん、そこで手伝って欲しいねん
働くのはまだ難しいけど』
『行きたい!!けど夜やろ?
父さんにバレへんかな…』
『大丈夫やで、そこは適当に誤魔化せば
ママがなんとかしたるから』
そう言って兄ちゃんは母さんに
ついてって出掛けた。
遅なるって、誤魔化したけど、
たかがコンビニ。
そこまで遅くなるとも思えない
だから、あやしまれるのも時間の問題だ
「よーしっ、炒飯出来たで〜
亮、運ぶの手伝ってー!」
「あ、おん、わかった」
優しく笑う父さんに、
もしも本当のことをバラしたら?
兄ちゃんも俺も見捨てんのかな
いつもは父さんの炒飯、
すごく美味しいのに。
美味しさなんて感じなかった。
「亮、怖くて言えへんのやったら
ええねんけど、なんか隠してるやろ?」
「え、う…ううん!」
「どうせお母さんやろ。
今日来て兄ちゃんたぶらかして
連れてったんやろ。見え透いた行動や」
「な、んで…」
父さんは怒ることもせず、
ただ黙って炒飯を1口、口の中へ入れた。