第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
兄の自分勝手は、
中学に上がってからだった
俺と兄は5つ年が離れていた
小学生の時は、
率先して俺の面倒を見てくれた。
小学2年、兄は中学1年、
母親が父親の留守中に訪ねてきた。
「元気?」
相変わらず露出の高い服で、
メイクも濃く派手で高そうなバックを持っていた
母親は兄を見るなり嬉しそうに
にっこり微笑んだ。
「ユウマは私に似て
ほんっまにかっこよくなってるやん」
兄は母が大好きだった。
だからこそ褒められて、
嬉しそうに微笑んでいたし
家に来てくれて喜んでもいた。
「亮はお父さん似やけど
ユウマと同じくらいかっこええわ」
「母さん、もう帰って来ないの?」
すがった兄に、
母親は困った顔をした
「ママは親権取られたからな、
連れて帰られへんねん。今日だって
お父さんにバレたら怒られんねん
会ったらあかん約束やからな」
「でも俺は母さんとおりたい!!!」
泣きそうな顔の兄は言った。
俺は別に母さんとおりたいなんて
思ってはいなかった。
父親といたほうが
まだ幸せな生活だろうと考えていたからだ。
「じゃあ、ひとつだけ。
ママからいい考えがあんねん!
ただお父さんには内緒にせなあかんで?」
あやしく笑ったこの笑顔に、
俺は気づくべきやったのかもしれん