第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
時間だけが静かに過ぎた。
何も出来なくてもどかしくて、
だけど、だからといって
すべき案があるわけでもなくて
余計に腹が立った。
「…りょ、」
涙で濡れた櫻井さんの顔は
いつもの優しさじゃなくて
恐怖で支配されていた
「なんとか、してみます」
「なんとか、って…?」
「大丈夫、です!
アテがありますから」
別に、彼らに特別深入りしたわけじゃない
守りたかったとか助けたいとか、
そんな綺麗なものなんかじゃなくて
ただ、似ていただけ。
私とシンクロする所があるだけ
苦しみ、悲しみ、束縛、呪縛
呪いのように重く縛り付ける、
暗くて真っ黒な闇。
口からツラツラ出るような、
綺麗な言葉なんか、私は知らない。
「……もしもし、ヤスくん?」
だから、締め付けるこの痛みとか
「…うん、あのね。お願いがあって」
フラッシュバックする嫌な思い出とか
「図々しいのは分かってる。…うん、」
震えるようなあの日の出来事なんて
「ほんと?ありがとう」
消し去ることなんか、できるわけなくて。
「任せとき、ねーさんの
頼みならなんだって叶えたる」