第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
1人に慣れた人は、
皆と仲良くする術を知らない
だから歩み寄る方法すら分からなかった
大切な存在だと自覚した時、
彼らを敵から守る方法を
悲しませず傷つけない方法を、
彼は一つも知らなかった。
だから彼は一つの結論に至った。
そう、
自己犠牲、という結論に。
「ちゃんって、
実は頭良いんだね。これ難しいよ」
「い、いえ…。平均ですよ、私なんて」
ふふ、と笑う相葉さんは
プリントに目を通す。
「俺、ちゃんに
話聞いてもらって救われたから」
突然、相葉さんが
そう言い放った。
驚いて相葉さんの方を見る。
「過去の傷は、ぜんぶを
受け止めたわけじゃないけど、
それでも軽くなったんだ。だからさ」
相葉さんは、
優しい笑顔を向けた
「亮のことも、救ってやって
亮だけじゃなくて、みんなの事も」
だけど、彼は言ったのです。
自己犠牲をするということは、
必ずしも守る術だとは限らないのだと
それでも、
自己犠牲することを躊躇わず
ボロボロになっても彼は笑って見せた。
ほら平気やで、安心してええで、
けれど彼は、言いたかった。
ホンマは俺は痛くてつらくて、
もう守ってやることに限界なんやって