第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
「その日、何があったのか分かんない
でもそれからだよ。亮がああいうふうに
明るく笑ってへらへらしてるのは」
心配そうに、付け足した
「本当は無理してるくせに」
遅くにごめんね、って去ってく
ああやって他人が傷つくのを見て、
錦戸さんは何を思ったろう
きっと自分が傷つくよりずっと、
痛かったんだろうな
そう思うとどうしてあそこまで、
嫌いな女の子に媚売って、
傷ついてまで笑ってるのだろう?
Plulu...
「はい、」
『ねーさん、僕やで!』
電話から聞こえる明るい声
「ふふ。元気そうだね」
『ねーさんは?体調は大丈夫?』
「相変わらずの心配症だね
今のところ元気だよ、ありがとう」
『僕も早うそっちに行きたいねんけどな
なかなか行けへんねん、ごめん』
「ううん、無理しないで」
彼の声はいつも安心する
だけど遠いところにいるから、
電話を切ると、
一人ぼっちになった気分になる
そうして今日も深い深い眠りにつく