第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
そして9時半すぎ、
玄関のドアが開いた。
びしょ濡れの翔さんは、
服は乱れていて泣きはらした目。
「ど…したの、それ…」
ぐしゃぐしゃの髪の毛、
ボロボロの体、
いつも優しくて親切な翔さんが
触れようと伸ばした俺の手を、
「やめろっ!!!触るな!!」
声を荒らげて拒絶した。
そしてすぐに気づいて、
涙を流して俺に抱きついた。
「帰りが遅いから、ニノと心配してた
いつもならいる時間なのに。
それなのにこんな…、何があったの」
「…図書館に、参考資料があったから、
借りに行こうと寄ったんだ。だけど…!」
そこから、怯えて
何も言わなくなった。
がた、
振り向いたらそこには亮がいた
「…、翔さん。俺、」
そう言って近づく亮を、
翔さんは精一杯の優しい笑顔を見せた
「だい、じょおぶ!
亮はなんにも心配しなくていい」
ふらふらと立ち上がって
翔さんは部屋へ立ち去った
その後を追って亮も2階へ駆け上がった。