第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
「元々亮は、ここの寮に入寮する時
無愛想で誰とも仲良くしようとしない
それはそれは一匹狼だったんだよねえ…」
リビングに集まって、
これからよろしくね、なんて
挨拶交わす時でさえ
目も合わせずペコッとお辞儀だけ
口さえ聞こうとはしなかった。
「特に女の子とは酷かったよ
最初はクールだとか色々言ってたけど
数日経てばイヤな男のレッテルだよ」
「でも、今は誰とでも仲良くされてて…」
「あるとき、翔さんがボロボロに
なって寮に帰ってきた時があったんだ」
それは、忘れもしない。
土砂降りの雨の中、
休みだっていうのに。
翔さんは夜9時過ぎても帰らなかった。
寮の門限は夜の10時。
「遅いね。いつもなら
もう部屋にいる時間だってのに」
「どっか寄り道じゃないんですか
あのひと、勉強好きですし」
そわそわしているのは、
俺達だけじゃなくて
異常なまでに
時計と玄関を気にする亮
まるで、何かあってるか、
嫌な予感を感じてるようだった。
「亮、どうしたの?
なにか心配なことでもあるの?」
「あ…別に…」
何か言いかけて、
その口を閉じて部屋へと
走って逃げて行った。